多汗症
- 2025年8月12日
- 皮膚の病気
多汗症とは
多汗症は、個人の意思にかかわらず通常よりも過剰に発汗する状態を指します。通常は暑さや運動時に体温調節のために汗をかきますが、多汗症の場合は気温や活動量に関係なく発汗が見られます。なかでも「手のひらが極端に湿る」原発性手掌多汗症や、「脇部分が特に汗ばむ」原発性腋窩多汗症など、特定の部位に著しい発汗が現れる例が目立ちます。制服や衣類に汗ジミが目立つ、手足がしっとりするなどの困りごとが生じるため、本人や周囲が悩むことも少なくありません。不快な思いをしたり、心理的なストレスとなることも多いです。
原因と症状
多汗症の発端となる原因は完全には解明されていませんが、複数の要素が絡んでいると考えられます。家族内に同じ症状がみられるケースがあるため、遺伝的体質や遺伝子の異常が関与している可能性も示唆されています。思春期や更年期などによるホルモンバランスの変動、精神的な緊張やストレスの影響も大きな要素です。また、自律神経のうち交感神経が活発になりすぎることで、汗腺が必要以上に刺激され発汗量が増すことがあります。このような複雑な要因が重なることで、多汗症が発症すると考えられます。
症状としては、幼児期や思春期に発症しやすく、手のひらや足の裏、脇の下など特定部位に大量の汗が生じます。汗が床にしたたり落ちるほどの量になることもあり、指先がむらさき色に近い色調になる場合も報告されています。
小児の心理的影響
子どもが多汗症である場合、外見や体臭に敏感になりやすく友達との関わりを避けてしまう傾向が見られることがあります。その結果、学校生活で不安感が強くなったり集団に溶け込めず孤独を感じやすくなったりします。こうした状態が続くと自己評価の低下や気分の落ち込みにも繋がりやすいです。また、同級生から誤解や差別的な言動を受けるリスクも高まり、いじめの対象になることも考えられます。そのため、周囲の配慮や心のサポートが重要です。精神的な負担が解消されないままだと子ども自身の発達にまで悪影響が及ぶ可能性があります。
治療
外用薬
皮膚に塗る薬で代表的なものは腋にはエクロックゲル、手にはアポハイドローションなどがあります。どちらも12歳以上から保険適応となります。
多汗症チェックリスト
次の項目に該当することが多い場合、多汗症の可能性があります。一度、医療機関への相談を検討しましょう。
- 緊張したときやストレスを感じたときに、手のひらや脇の下で汗が増える
- 暑さと無関係に汗が多い
- 衣服や書類に汗ジミがつきやすい
- 頻繁に手足が湿っぽくなる
- 夜間は発汗が見られない
- 身内にも似た症状の人がいる
- 日常生活に影響している
親御さんへのアドバイス
お子さまが多汗症に悩む際は、家庭でできるサポートが大切です。衛生面への配慮として、汗をかいた後は速やかに拭き取る習慣や、入浴・シャワーで清潔を保つことが推奨されます。衣服に関しては、風通しがよく吸湿性に優れた素材を選ぶことや、こまめな着替えを心掛けましょう。また、子どもの気持ちや悩みに耳を傾け、ストレスを減らすための声かけも大切です。
まとめ
必要以上の発汗によって子どもが学校や家庭で困ることは少なくありません。しかし、適切な治療と生活上の工夫により、汗に伴う負担を減らすことは十分に可能です。思春期のお子さんは自分から訴えにくいことも多いので、普段から目を配りながら困った時はぜひ当院にご相談ください。